9曲目『一番素敵だった日』
今回は、火遊びのあとの虚しさ『一番素敵だった日』を深読みしていきたいと思います。
一番素敵だった日
詞 AZUKI七
“飾り立てたスタイル その場だけのトーク
ノリのよさが瞬間生きてるような
わりと嫌いなタイプ だけど目に焼きつく
楽しそうに笑う声だけが好き”
気になる相手は、外面バリバリ着飾って、勢いだけのペラいトークでその場を盛り上げて、ノリで生きてて、つまりチャラ男です。
片思いを募らせていた感もなく、初対面っぽいイメージです。
パリピは嫌いなようなので、主人公は遊び人タイプではないと思われます。
描写的に二人きりではなく、周りに大勢いると考えます。
友達に誘われて無理やり行った合コンなりバーベキュー大会的なイベントで、見るからに軽薄そうなウェイ系がいて、嫌いなタイプのはずなのになんか気になっちゃう――そんな場面が想像できます。
“どうせ虚しいんだ 失敗ばかりだ
恋に落ちるたび別人のようになるのもいい
かまわない”
うまくいかない恋を繰り返してきたのか、恋愛というモンに対する諦めが感じられます。
ガーネットの曲の登場人物は基本こういう奴です。
“恋に落ちるたび別人のようになるのもいい”というフレーズからは、「どうせ恋なんていつか冷めるし、その間だけ別人のように変身できて、普段の自分を忘れられるならそれでいい」みたいな刹那的思考が伺えます。
現実逃避するために、無理やり恋に溺れようとしている感じです。
ここまでの描写を見るに、主人公は毎日がつまらないのか、孤独なのか、かなり刺激に飢えてる印象です。
普段嫌いなはずのチャラ男タイプが気になっちゃう時点で、心の奥では危険な恋をご所望です。
ヤバいとわかっていながら、わざとスリリングな方へ自分を導いている節があります。
“‘イチヌケタ'ってわかりゃしない
退屈ならもてあましてる
希望と破滅が同じにみえたこの夜はあぁ
なんて素敵な夜 一番素敵だった日”
“イチヌケタ”というのは、1抜け=最初に抜ける、という意味だと解釈します。
最初に抜けたってバレねぇだろ――合コン等で二人がいつの間にかいなくなっているアレ、「こっそり抜け出しちゃおっか♡」です。
要はワンナイトです。
やはり毎日が退屈で、火遊びしたい気分だったようです。
「この恋でもしかしたら幸せになれるかもしれない」という希望と、「どうせ一時の快楽で終わり、一層虚しくなるだけ」という破滅が同時進行しながらハメを外す夜、気持ちェェ〜〜!!ということです。
“一番素敵だった日”ということは、やはりこの夜がピークで、その後いい関係に繋がることはなかったと思われます。
“会いにゆきましょう会いたい人に
晴れ渡れ空 遮るものなど何もない位うかれたい”
あの夜のあと、ワンナイト相手と体の関係になったと思われます。
また会いに行くようですが、ホントに浮かれているときに“うかれたい”とはわざわざ考えないので、やはり頭のどっかに「何やってんだろう」と思う冷静さが残っているようです。
無理やりハイになろうとする痛々しさが感じられます。
“‘ナゲダシタ'って間違わない
重なり合うのは夢じゃない
体と体 絡み合う視線
想いなどあぁ 重ねようとしても ソー フーリッシュ”
“ナゲダシタ”というのは、身を投げ出すという意味で解釈します。
報われない恋に身を投げる、体を許す的なニュアンスです。
セフレ関係に溺れつつも、間違った考えは起こさず(本気で恋が実ると期待せず)、「向こうはただのヤリモクだと分かってますよ」ということです。
重なってるのは体のみで、想いが通じ合ってるわけじゃないと完全に気づいているので、もうこの先は虚しさのみです。
“‘イチヌケタ'ってわかりゃしない
退屈ならもてあましてる
希望と破滅が同じにみえたこの夜はあぁ
なんて素敵な夜 一番素敵だった日
繰り返し。
まとめると、「退屈な毎日に嫌気が差し、刺激を求めてチャラ男とワンナイトして、その日の夜はハメを外せて最高だったものの、その後はただのセフレ関係になり、また虚しさだけが残った」ということになります。
・ひとこと感想
切なく儚げなイメージのGARNET CROWの恋愛ソングの中では、かなり俗っぽい内容ですが、生々しいリアルさがあって新鮮です。
恋愛のキレイな部分だけでなく、人間のこういう一面も描いてくれるのが良くて、詞の内容がお気に入りの曲です。
(※本記事の内容はすべて個人的な解釈によるものです)