GARNET CROW PARK

GARNET CROWの歌詞の意味を考察しているブログです。

3曲目 『アオゾラ カナタ』

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今回は、思い出引きずり青春ソング『アオゾラ カナタ』の歌詞を深読みしていきたいと思います。

 

アオゾラ カナタ

AZUKI七

“晴れ渡る空に飛び立つ 羽持つ者達を眺め
寄り添う二人は ユラユラリ
未来をさがしにゆくようね
アオゾラ カナタ”

二人で寄り添い一緒に空を眺めているという、青春ド真ん中、まさしく「イイ感じ」な場面からスタートです。

羽持つ者達(=鳥)が飛び立つという描写や、しっとりとした雄大な音作りからは、日が昇りきる前の幻想的な美しい夜明けを思わせます。

早朝の絶景スポットにでも来たのか、二人きりの世界に没入しているような印象です。

この導入部を聞いているだけでマイナスイオン効果は絶大。

大空の下でさらさらした風に吹かれているのと同等の、すさまじい開放感を手に入れることが出来ます。

“未来を探しにゆく”という描写からも、これから二人で何かが始まっていく、そんな爽やかな希望を感じさせるシチュエーションです。

 

“ねぇ 夢の中で君に触れた気がしてたんだ
紫陽花の色が揺れて雨降りの気配
あぁ あの日はまだ同じ痛みを抱えていた
夜明けは今優しく君を送り出す?”

“紫陽花の色”“雨降りの気配”など、梅雨時を想起させるワードが並んでいます。

さっきまで夢の中にいたっぽいので、恐らく寝起きです。

朝目覚めて、カーテンでも開けたんでしょう。

雨が降りそうな微妙な天気のようですが、前ブロックでは空は晴れ渡っていたので、完全に場面は変わっています。

“夢の中で君に触れた気がした”というのは、どうにも距離を感じるニュアンスです。

前ブロックとの綺麗な夜明けと、ここのどんよりとした一日の始まりの対比からも、現在は「君」と頻繁に会えるような関係ではなくなったことが伺えます。

“あの日はまだ同じ痛みを抱えていた”……「あの日」というのは、前ブロックで出てきた一緒に空を眺めた日を指していると予想できます。

あの絵になる情景描写は回想だったようです。

痛みとは、孤独や不安、あるいは辛い過去のようなモンだと思われます。

二人は似たような生い立ちや境遇だったのかもしれません。

“夜明けは今君を優しく送り出す?”というフレーズからは、最後に「?」マークがついていることから、相手の近況をあまり詳しく知らないことが推察されます。

連絡も取ってなさそうです。

遠く離れたどこかで同じく夜明けを迎えている相手のことを思い、「優しい夜明けに送り出されているの?(=元気で穏やかな日々を過ごせているの?そうだといいな)」と心配している印象を受けます。

現在は訳あって離れているようですが、この主人公は相手のことがまだバリッバリ好きなようです。

 

“遠ざかる街と もてあます未来
ずっと消えない迷いや不安
一番明るい声で「またね」って言えたなら
いつか会える気がしてた”

“遠ざかる街”とあるので、どうやら移動中のようです。

“もてあます未来”というフレーズからも、ここのブロックは恐らく別れた日の描写だと思われます。

二人が暮らしていた街を離れ、一人で列車か何かに乗っている主人公の姿が浮かんできます。

街を出ているので、どちらかというとこの主人公側に事情(例えば夢を追うために上京)があって、別れた印象を受けます。 

“消えない迷い”というワードからも、何らかの決断があったことが伺えます。

別れの決断が正しかったのか、これから始まる新しい日々は大丈夫なのか、もう不安で不安で仕方ないようです。

恋愛関係が終わったとも、別れてはいないけど遠距離になったとも取れます。

ただ、最愛の相手との別れの場面で“一番明るい声で「またね」と言う”…そんな非常に厳しい条件をクリアしても、“いつか会える気がする”程度の僅かな希望しかないようなのです。

つまり、会える見込みはほぼナシです。

「3年経ったら帰ってくンぜ」的な期限付きの別れではなく、再会の保証がない無期限の別れであることが推察されます。

嫌いあって別れたわけではないものの、もう関係としては終わってしまっているのかもしれません。

 

“流れてゆく日々は Shiny Days
想い出の中にある Rainy Days
君の大切な人でいたい 離れても願ってしまうよ

イケイケのShiny Days(眩しい日々)を送っているようなので、一応充実はしているようですが、依然として想い出には後ろ髪を引かれています。

自分から離れたくせに、相手にとって大切な存在であり続けたいという大人気ないワガママっぷりを晒しています。

やっぱり遠距離恋愛ではなく、一旦完全に別れたんだと思います。

「もう別の大切な人がいてもおかしくねェよな」と思ってるからこその発言だからです。

よほど相手に「ホ」の字だったご様子で、未練タラッタラですが、情けなくも切なくて好きです。

 

‘せーのっ' て飛び出したら Rolling Days
君はまるで ‘ソラ' ね Blind Days
こぼれそうな想い 出会えたら
また ‘始まり' は其処にあって 青空 彼方”

“せーので飛び出したら”、“Rolling Days(慌ただしい日々)”というフレーズからも、「やはり夢を追っかけて挑戦に踏み切る道を選んだ」感があるので、そういう想定でいきます。

“Blind Days(先の見えない日々)”の中でもふと見上げたら癒やされる……君はそんな空のような存在だと言っています。

思い出が一種の精神安定剤になっているようです。

ただ、サビのラスト2行を見るに、次の出会いの可能性も視野に入れているようです。

心のどこかで「いつまでも昔の思い出に浸っているワケにはいかぬ」という現実もわかっているのでしょう。

 

“ねぇ 時の中で すべて流れゆくとしても
変わらず思い返す そんな日々がある”

どれだけアツアツな日々を過ごしたのか知りませんが、一生もんレベルにまで強く心に刻まれているようです。

輝かしい思い出はどんどん美化されて最強のゴーストカー(自己ベスト記録)として君臨するので、コイツは当分断ち切れそうにないです。

なんとなく、主人公は若い(青い)イメージです。

 

“突き進む道と つきまとう過去(キオク)
どっか足りない想像の向こう
ふと誰かに寄りかかってしまいたくなる時
いつも君を想うけど”

思い出を“つきまとう”とネガティブなニュアンスで表現しているので、やはり自分が過去に捉われすぎている自覚はあるようです。

思い描く未来の先に「君」がいないことを、“足りない”と感じています。

ひたすらに未練タラタラで、そろそろうっとうしくなってきましたが、気持ちは理解できます。

 

“今辿りゆくのは Smily Days
もう少し一人でも Trying Days
無邪気な約束 寂しい時は 一筋の光のように”

性懲りもなくまた昔の思い出に浸っているようですが、ここで“もう少し一人でも”“無邪気な約束”という気になる表現が出てきました。

近い将来ヨリを戻す可能性も感じられる表現ですが、これまでの文脈から判断して、そんなサクっと再会できるとはあまり思えません。

「そのうちまた誰かと恋をするかもしれないけど、今はまだ夢に向かって一人で頑張ろう」と自分に言い聞かせている、という解釈で読み進めます。

“無邪気な約束”というのは、小さな男の子と女の子の「オトナになったら絶対けっこんしようねー!」「うんー!」的な、実現の可能性の低い夢物語だけど微笑ましい約束、というニュアンスを感じます。

別れ際に、無理だと分かっていながら「いつかまた会って一緒になれたらいいね」なんて切ないやりとりがあったのだと想像します。

 

‘じゃぁね' って始まったから Growing Days
触れるたびに消える Misty Days
すれ違うままにいつまでも
‘想い' は彷徨う鳥のよう 君は彼方

別れてガムシャラに夢を追いかけ始めたからこそ成長できているものの、そんなめまぐるしく過ぎていく毎日をMisty days(霞のような日々)とも思っています。

何かに夢中になっている時間は充実していますが、そのぶん一日一日の消費スピードがエグいので、ふと「もうこんなに経ったのか」と虚しさも同時に感じてしまうのでしょう。

そんな思いの間で揺れながら、遠くの君をまた思い出しています。

キュッときます。

 

“流れてゆく日々は Shiny Days
想い出の中にある Rainy Days
君の大切な人でいたい 離れても願ってしまうよ”
“‘せーのっ' て飛び出したら Rolling Days
君はまるで ‘ソラ' ね Blind Days
こぼれそうな想い 出会えたら
また ‘始まり' は其処にあって
アオゾラ カナタ”

1番のサビの繰り返しですが、唯一の違いとして、“青空 彼方”と漢字表記だったものが、“アオゾラ カナタ”とカナカナ表記に戻っています。

このカタカナ表記は、冒頭ブロックのウッキウキだったあの日(「君」といた頃)の描写に出てきます。

1番のサビでは次の出会い(他の誰かとの始まり)を想像していましたが、最後はやっぱり「君」との再会を夢見る未練タラ男(子)に戻ったのかもしれません。

 

まとめると、「夢を追いかけるために好きだった相手と別れて街を飛び出し、一人で慌ただしくも充実した日々を送っているものの、いまだに昔の眩しい思い出に捉われ続けてしまう、未練タラタラソンということになります。

 

・ひとこと感想

爽やかでポップな曲調と、キュッとするたまらなく切ない歌詞のハーモニーが絶品な名曲です。

メロディーにすーっと歌詞が乗っていて、サビのところはもう「アオゾラ カナタ〜♪」しかないな、というドンピシャな気分になります。

七さんの作詞家としての技術に脱帽です。

 

(※本記事の内容は全て個人的な解釈によるものです)